この本は2014年11月20日 初版が発行されている。
きっかけは、2014年に発生したエボラ出血熱とデング熱の流行を受けて、医療従事者と一般向けに、リスク・コミュニケーションについてまとめたものとある。
おりしも、現在、2020年 新型コロナウイルスが全世界に流行し、この日本全国に非常事態宣言が出され、東京では、医療崩壊がすでに始まっているのではないかと言われているのだ。
まず、リスク・コミュニケーションとは何か?
リスクに対峙するときは、リスクそのもの「だけ」を扱っているのでは不十分で、リスクの周辺にあるものに配慮し、効果的なコミュニケーションをとることが大事になる。と著者は言う。
福島第一原発の事故は、もうすでに9年前の事故となったが、今だに廃炉に向けた試行錯誤が続いている、日本最大の事故である。当時、テレビで報道される記者会見や、政治家の意見に世論は怒りや、失望を感じ、翻弄された記憶があるだろう。
まさに、効果的なコミュニケーションがリスクそのものを減らしたり、パニックを回避するのに有効であることがわかる。
また、STAP細胞に関する騒ぎ、あの論文が間違っていた、という理由で、関係の無い人が外野から、理不尽なまでに石を投げ続け、「人の死」という新たなリスクが生じてしまった。
リスクと無関係な人がよけいなコミュニケーションに過剰に参画してしまう。現在の情報社会の中の象徴的な出来事であった。
著者は、感染症の現場で経験した、体験をもとに、具体的なコミュニケーションの方法を語っている。たとえば、
●リスクコミュニケーターには高い倫理観が必要である。また、倫理的であるとは、言葉で言っているだけではなく、倫理的に行動しているということが必要。
●プレゼンテーションよりトーク。スライドはトークのついでにある添え物です。トークこそが、プレゼンテーションの主役。メッセージを伝えるのに何が必要かが重要で、メッセージを伝えるのに、スライドが必須だったら、スライドを使えばよい。
現在、私達は、新型コロナに関する、多くのテレビ報道、インターネットによるニュース、Twitterを使った個人の情報発信などにさらされている。
その中には、正しい情報もあれば、フェイクニュースもあり、また、その情報により、人々は、国のリーダーの対策の遅れに、怒りを感じたり、医療関係者や物流を担っている業者への差別や偏見が起こっている、ニュースに、憤りを感じたりしてしまう。
私達一人一人が、自粛を要求されたストレスの大きい生活の中で、どのように、世間とコミュニケーションを取るべきか、実際に問われているように思う。
多くの世界中の人々がインターネットを利用している現在において、リスク・コミュニケーション技術は、本当に重要な技術であると思わざるおえない。
シラチャの町(タイ)町の海側には、こんな住居があって驚いた。